011105takaday  高田裕介

 

テロ事件の経済への影響

 

九月の完全失業率が過去最悪の5,3%に達し、大企業を中心とした大規模なリストラの雇用への悪影響が鮮明となってきた。もともと各企業は、デフレによる消費不振やIT産業の不況を受けて、電機メーカなどを中心に万単位のリストラ計画を発表してきた。それに加え、アメリカでのテロによるクリスマスの消費不振が懸念されることにより新たなる人員削減が、大企業で発表された

 

影響について

 

大手企業の対策

日本製作所

今年度末までの半導体部門の人員削減を1100人上澄み。

富士通

今年度末までの人員削減を4600人に上澄み

東芝

半導体部門の3000人削減計画を2年前倒しし、今年度中に実施。

松下電器産業

早期退職者優遇制度で今年度末までに8000人削減。

富士電機

今年度中に1500人削減。

日本ビクター

2002年度中に3500人削減。

T  D  K

2004年までに8800人削減。

ミノルタ

2003年度末までに2500人削減。

大日本印刷

2003年度末までに2100人削減。

三菱マテリアル

2004年までに2500人削減。人件費も1割カット。

 

テロの具体的な影響について   (石川 秀樹氏のコメント参考文献(石川氏のサイト)

 

今回のテロにより、航空貨物が届かず操業停止に追い込まれた企業も出ています。また、米国への武器・弾薬の流入を防ぐため、カナダ、メキシコから米国へ入国するトラックは、国境検査が厳しくなり、国境で渋滞し、部品が届かず操業停止に追い込まれる企業もでています。これは、企業が効率化のために実施してきた国際的部品調達とジャスト・イン・タイム方式(在庫を持たずに必要なときに納入させる生産方式)が、テロなどの危機に脆弱であるということを露見させてしまいました。国際的な物流が停滞すると部品や原材料が納入されず、在庫を持っていないため操業停止に追い込まれる工場が続出しています。また、テロの不安感は、まず、航空関連業界や観光業界の需要には直接的に影響し、その他の消費にも心理的ブレーキをかけると考えられます。さらに、人々は、株から安全な資産へとシフトしている結果、株価が下落しています。その結果、株保有者は損をしており、個人の消費に悪い影響を与えます。また、日本の場合、銀行、保険会社が大量の株式を保有していますから、銀行、保険会社が大きな損失を被り、経営体力が低下することは避けられません。このように、テロの影響は、日米ともに短期的には需要を減らし経済にマイナスに働いています。ここで、注意しなくてはならないのは、景気に影響を与えるのは需要の「水準」=大きさそのものではなく、方向性だということです。つまり、需要が一時的に減っても、ある時点で減少が止まれば、景気の悪化は終わるということです。この意味では、テロへの不安感で永遠に消費が減少することはありませんので、このまま消費の落ち込み続き景気が悪化していくというおそれはありません。ただ、短期的な消費の落ち込みが原因となって、企業の設備投資が落ち込むことにより需要が減少し、それが生産を減少させ、さらに設備投資を減少させるという、生産の減少と投資の減少の悪循環の引き金になる恐れはあります一方で、テロの影響は中期的にはプラス面もあります。まず、破壊された施設を作り直す復興需要が発生します。これは米国景気を押し上げる効果があります。また、米国政府の緊急の財政支出による需要拡大効果もあります。他にも、警備の強化などによりセキュリティービジネスの需要が拡大します。これは、米国に限らず、各国において需要増加となります。また、各国中央銀行が、テロの不安に対し、貨幣が不足して混乱しないように貨幣供給量を増加させました。この金融政策は、貨幣供給量の増加−>金利の低下−>投資の拡大−>需要増加−>景気回復という効果を発揮します。(ただし、日本の場合には、十分に金利が低いのでこの効果があるかどうかは議論が分かれます。)このように考えると、今回の同時テロの効果は、短期的にはマイナスであるが、中期的には、プラス面とマイナス面両面があり、どちらの力が強く働くかということになります。米国経済については、景気が来年前半には回復するはずであったのが、来年後半にずれ込むという程度の影響ではないかと考えています。これは、私だけでなく、多くのエコノミストの意見です。たとえば、野村総合研究所は、財政支出増額により、GDPは+0.8%、金融緩和によりGDPは+0.5〜+0.6%、個人消費の落ち込みがGDPを−1.0%〜−1.2%、合計するとGDPを+0.1〜+0.4%と押し上げる効果があると試算しています。むしろ、今回のテロは日本に大きな影響を与えるのではないかと考えています日本は、米国の景気悪化と円高のダブルパンチにより輸出が減少し、景気はさらに悪化します。さらに、短期的な株価急落が銀行の収益を圧迫し、金融不安が再燃する恐れもありますその結果、金融問題、不良債権処理の抜本的解決が急がれる局面も予想されます。以上のように、日本経済は、短期的には非常に厳しい経済状況になるというのが大方の予想です。しかし、中期的な影響については、大きくマイナスの影響があるという予想と、それほど影響がないという予想にわかれています。なぜなら、一時的な景気の落ち込みが景気悪化の悪循環に陥らない限りは、中期的にはマイナス効果は剥げ落ち、景気には大きく影響しませんが、景気悪化の悪循環が始まればマイナス効果となるからです。中期的にはマイナス効果はほとんどないと考えます。

キーワード
ジャスト・イン・タイム方式
在庫を持たずに必要なときに納入させる生産方式。トヨタ自動車の「かんばん方式」が始まりといわれる。在庫を抱えておかなくてよいので在庫費用を削減できるという長所がある。一方、必要になる度に頻繁に輸送する必要があり、輸送費がかかり、工場付近の道路が混雑するなどの短所も指摘されている。米国の同時テロ事件で輸送が停止したときに、在庫をもたないので工場が操業停止に陥るという問題点が明らかとなった

 

 

アメリカを覆うテロ不況

 

参考

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/ynews/20011023i413.htm

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/special/22/usa49-53.htm

http://allabout.co.jp/career/economyabc/subject/msub_gdp.htm